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2006年11月23日 (木)

「液冷戦闘機 飛燕」を読む その2

・第二の悲劇

 第二の悲劇と言えば、運用側の問題。
 元々、陸軍ではBMW系の液冷エンジンも使用していたのだが、一端その系譜が絶たれて空冷エンジンのみとなった時期が出来た。
 飛燕のエンジン「ハ40」はそれ以来の液冷エンジンとなった訳だが、その時に液冷エンジンを扱っていた古参の整備兵の数は少なく、部隊配備に合わせてその部隊の整備班を教育していったのだが、メーカーとしては教育時に故障で変なミソを付けたくなかったのか? 割と当たりのエンジンを使って実習を行う。 液冷に慣れない整備兵は結構その事実に気づかず、前線で当たってないエンジンの故障を前にこんな筈では?と言うこととなり稼働率が上がらない。
 そして軍上層部はただでさえ複雑なエンジンにも関わらず、原材料をケチって材質を落とさせて、更に稼働率は下がってしまう。
 そんな問題のある機体(制式前だから問題があって当然とも言えるが)を、環境の厳しいニューギニアで実戦させれば問題が出ない訳が無い。
 離陸直後にエンジン停止なんて冗談じゃないトラブルで落ちたパイロットは結構多かったと言う。
 それでも何とかエンジンに慣れて稼働率が上がり始めた頃、ニューギニアの戦況は悪化しだんだんと追い詰められていく。
 陸軍の航空部隊は海軍のそれと違って戦術空軍の性格が強い。
 なので前線近くに基地を設けて前線への航空支援や制空権奪取を行うのだが、これが守勢となると、前線に近い基地は戦闘地域に飲み込まれてしまう。
 この時にパイロットは失う訳には行かないので、後方退避がかかるのだが、地上勤務の整備兵や基地整備の要員はそのまま取り残されてしまう。 
 整備する飛行機が無ければ整備兵もただの兵隊と言うことで、そのまま鉄砲持たせて戦死させる事が多かった。
 が、部隊としてはパイロットが後方退避しているので実戦部隊として再編成を行う訳だが、その時には飛燕の整備をマスターした整備兵は現地に取り残されて救出が出来ないので、再び新しく集めた整備兵に飛燕の整備をマスターさせるところから始まる。
 一旦伝承されてきたスキルが途切れると、その再生には多大な労力を擁する。
 これは別に飛燕の問題ではないし、帝国陸軍だけの問題でも無い。
 いつの時代のどこの会社でも起こり得る話しである。
 
 まだ続く

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