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2014年9月15日 (月)

横山信義著「八八艦隊海戦譜」読了

 作者の作家生活20周年記念作品として、初期の「八八艦隊物語」をリメイクと言うか、あの設定でもう一回書いてみたと言った趣の方があっていそう。
 ボリュームが増した分描写も細かくなっているし伏線の張り方も20年の技が見える。
 第二次大戦後、結果は同じでも巨艦大砲主義がそのまま続いてしまった世界を描いたデビュー作から繫がる物語なので、作者の思い入れもひときわある感じだ。

 戦艦8巡洋戦艦8の「八八艦隊計画」自体は史実でもあり、他の大国も同様の計画を持っていたが、凄まじい金食い虫計画にどの国も危機感を抱いて、ワシントン海軍条約で足枷をはめて国家破綻を回避したと言う、何を守るための計画なのか訳が判らない計画だったのだが。

 この世界では何故か戦艦巡洋戦艦が8隻づつ出来て運用できてるわ、陸軍もそこそこの装備を持っているわ、ポスト八八艦隊計画も進行していて大和型まで作ってるわと、この日本はかなりの金持ちになっている(笑)
 普通、金持ち喧嘩せずなのだが、これまた何故かアメリカと戦争する事に。
 資源の確保もまともに出来てないのは史実と一緒なのだが、日本の経済がこのレベルに達する前に資源が問題で戦争になってるよ。

 ただ、金があるせいか?充分なおもちゃを与えられているせいか、この世界の日本軍はかなりまとも。
 「八八艦隊物語」では悲惨な結末を迎えていたが、この作品ではかなり良い形でアメリカと講和ができている。
 帝国海軍がやりたがってた艦隊決戦をやりまくってそれなりの結果を残して、最後の決戦も戦術的には勝利を取って講和となっている。
 ただ、それは戦艦の力では無く、戦艦を一夜にして旧兵器に追いやった「アレ」のせいで、アメリカは太平洋でチマチマと艦隊決戦やっている余裕が無くなった方が大きかった。
 この結末を読むと、戦艦が何隻か残ったとは言え、もはや大国を名乗る資格が無くなった日本の戦後はかなり微妙な舵取りをさせられる事になるんだろうなと、決して明るくない未来が想像できる結末に。

 この世界観で現代を描いてみてほしい気はするけれど、作者は第二次大戦以外は手を出さない様な気がする。

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